小林源文作品

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小林源文作品の寸評です。

ベトナム戦争物しか読んだ事はありませんが、
他に、どんな作品を描かれているんでしょう?

ネタバレ、注意!


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Cat Shit One - 漫画 (初稿:1999/07/28, 最終更新:1999/07/30)

この作品に出会ったのは、ZDNet Japan WEB COMICSって云う、オンラインで漫画が読める、っちゅーサイトでした。

初めて読んだときと衝撃たるや!
「ウサギが、ベトナム戦争やってる・・・!」

そう、登場するキャラクタは、愛らしい(?)動物たちなのに、実は、ベトナム戦争を題材にした、戦争漫画なんですねぇ。

簡単な設定の説明をすると・・・。

舞台は、1968年頃(多分)のベトナム。
北部指揮管制本部所属、特殊作戦グループ偵察チーム(これも曖昧)、パッキーことパーキンス軍曹は、ラッツ、ボタスキー、チコたちと共に、危険な任務に挑む。

彼らのコードネームは、Cat Shit One(猫の糞1号)。

作品の構成としては、大体、1話完結で、キャット・シット・ワンが、任務をこなしていく、と云う物。

はっきり云って、話はリアル路線(キャラクタは動物だけど)なんで、ベトナム戦争に造詣が深くないと、「何を云ってるのか、全然分からない」ってな事になります。
っちゅーわけで、個人的な意見としては、雰囲気で楽しむ作品だ、と思っております。
欄外の訳注を読みながら、当時の雰囲気を感じるのが、なかなか楽しいですわ。

それでも、同著者作品のVIETNAM WARに比べれば、格段に読み易いんで、ベトナム戦争入門としては、結構良いんじゃ無いですかね?
ベトナム戦争に関する資料も載ってますし。

そう、キャラクタが動物だってだけで、ここまで雰囲気が柔らかくなるんですねぇ。
話してるセリフとか、結構シリアス(と云うか、リアルなんで、かなり淡々とした印象)なんですけどね。

さて、キャラクタは動物なんですけど、人種によって、その動物が違います。

ウサギ:アメリカ人
:ベトナム人
:フランス人
:ロシア人
パンダ:中国人
:韓国人
:日本人

これがもう、ピタリとハマるんですわ!
特に、ブタとサルね(笑)。

この作品、実は、コンバットマガジン誌に連載された物と、ZDNet Japan WEB COMICSに連載された物の、ツーバージョンがあるみたいです。
単行本「Cat Shit One」第1巻は、コンバットマガジン誌に連載された物を収録した単行本で、単行本「WEB COMiCS」第1巻に収録されているCat Shit Oneは、ZDNet Japan WEB COMICSに連載された物です。

このふたつのCat Shit One、相違点は、コンバットマガジン版は、初めから皆動物だったのに対し、ZDNet Japan WEB COMICS版では、宇宙飛行士のパーキンスが事故に遭い、気が付いたら、皆動物の世界、しかもベトナム戦争の時代にタイムスリップしてしまった、と云う設定の違いですね。

この、ZDNet Japan WEB COMICS版の設定、私としては、無くて良かったと思います。
コンバットマガジン版みたいに、舞台はベトナム!アメリカ人はウサギなの!そうなの!って感じで、いいんじゃないですかねぇ。

無理に、ウサギである理由とか、付けなくてもいいと思うんですわ。
まぁ、ZDNet Japan WEB COMICS版にしても、理由らしい理由は語られて無いんですが。

大体、この作品は、ベトナム戦争を戦っているアメリカ人を、ただリアルに描いているわけで、初心者には敷居が高めなんですよね。
普通だったら、読者を感情移入させる為に、その世界に対してド素人なキャラクタを登場させて、その素人が、その世界について学んでいく過程で、同時に読者にも世界を説明するとか、そう云う事をやるんですけど、この作品は、そう云うのが無いですし、無くても構わないと思うわけですよ。

パッキーを読者の案内役にするつもりだったのかも知れませんけど、あまり、成功してるようにも見えませんし・・・。

淡々(少なくともドラマチックじゃ無いと思う)と進む話の中で、ドキッ!とするシーンが幾つか。

例えば、単行本「Cat Shit One」第1巻のmission:3、S&R(サーチ&レスキュー)作戦

撃墜された機体から脱出した空軍パイロット、アンダーソン少佐の救出作戦の話で、キャット・シット・ワンが、ベトナム軍によって搬送中の少佐を発見、保護。

「アンダーソン少佐、国へ帰りましょう。」
「よく来てくれた。フロント・シーターは脱出しなかった。俺は背骨が折れてる。」

「少佐、身体の具合は?水は飲みますか。」
「ありがとう、足の感覚がないんだ。」

ベトナム軍との銃撃戦の最中。

「俺を置いてけ。君たちは充分やった。」
「何いってんだ、少佐。黙っててくれ。」

脱出に成功し、搬送用のヘリコプターの中で、少佐がパッキーに一枚の写真を手渡す。

「ありがとう、パーキンス軍曹。私の家族だ。」
「少佐、すてきな家族です。うらやましい。」

機内の衛生兵が、少佐に点滴を打ちながら云う。

「死にました。」

少佐の家族写真 10KB しょ、少佐〜(涙)!

その家族の写真ってのが、奥さんと、その子供たちが、幸せそうな顔で写ってて、イカン、こう云うの、弱いんだ、私ぁ(以前、実生活に於いて、似たようなシチュエーションで泣いた経験有り)。

空軍パイロット アンダーソン少佐
家族の写真

あと、通信兵のボタスキーが好き。

mission:4、FO(前方砲兵観測)で、キャット・シット・ワンが乗ったヘリコプターが墜落。
どうにか、パッキー、ラッツ、ボタスキーの3人は助かったが、無線機が壊れてしまった。
ベトナム軍に追われる最中の、パッキーとボタスキーの会話。

「ボタスキー、無線機を捨てろ。」
「いやだ!」
「壊れてる、捨てろ。」
「俺、これがないと、みんなのお荷物だ。」

ボタスキーの気持ち、分かる!分かるぞ、ボタスキー!

多分、銃の扱いとか、苦手なんだろうなぁ。
唯一の存在理由(大袈裟かな)である無線機を、壊れてしまっても捨てられない、捨ててしまえば、本当に役立たずになってしまうと云う恐怖感。
壊れた無線機を抱えていても、逆に足手まといになるのは、確かに判り切ってるんですけども、極限状態では、こんな感じになるんでしょうねぇ、きっと。

いやぁ、ボタスキー、いいですよ〜。
可愛いんですよねぇ、ボタって。

mission:6、テト(基地襲撃)でも、

「ラッツ、被害は。」
「7人だ。もたないぞ。」
「ボタスキー、CPに支援を要請しろ。」
「おい、ボタスキー」
「怖いよ。」

なんて、頭を抱えて泣いてたりとか、mission:8、休日では、サイゴンで悪いベトナム人に引っ掛かって、「金、全部盗られちまった」って、耳に包帯巻いて泣いてたりとか、う〜ん、イカス。

でも、これが普通の人間の姿で描かれていたら・・・。
き、気色悪ぅ〜!

やっぱ、登場人物が全部動物って云う発想は、凄いんだなぁ。

・・・で、Cat Shit One Vol.0って、いつ発刊されるんだろ?
もしかして、もう発刊されてる?

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